恋人は魔王様
久しぶりの学校は、なんだか新鮮に見えた。

「大丈夫?なんか流行病にかかったって聞いたんだけど」

笑麗奈が心配そうに聞いてくる。
なんだよ、そのハヤリヤマイってっ!

ママがそういう中世の言葉が大好きなのは知っているけど、それにしても突っ込みどころが多すぎる設定に、私は思わずにこりと笑う。

ああ、笑うなんて久しぶり☆

「ありがとう。心配掛けてごめんね。
もう、大丈夫。
あ、うつることもないから心配しないで」

「もちろんよ。
良かったー。百合亜が居ないと、やっぱり学校つまらないもの」

笑麗奈はフランス人形の如くにこりと笑った。

久しぶりの学校で、授業は少し良く分からなくなっていたけれど、気の利く担任が一週間分の全ての授業をコンパクトに纏めたものを私にくれた。
他の教科の教師全てに頼んで、纏めてもらったんだって。
ちょっと、山根ちゃん(私の担任42歳、男。ちなみに専門は技術!)のこと見直しちゃった☆

「あれ?数学の教師……駒木じゃないんだ?」

私はそれぞれのプリントを見ながら首を傾げる。
数学のプリントを作ってくれた教師の名が、知らない人になっていたからだ。

「うん、駒木ねー、先週の水曜日に突然辞めちゃったの。
実家の母親が病気になったらしくって、どうしても今すぐ帰ることになったんだって」

「そっか」

そりゃ、自分のせいであれだけ人が死ねば、良心も痛むだろう。
不倫はよくないけど、良心が痛むっていうのは、人間らしくていいなぁ、と思ってしまう。

良心なんて微塵もない悪魔ってものに接したからこそ思うことだ。
……もう、忘れちゃったけどね……
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