恋人は魔王様
さぁと一陣の風が吹き、下校中の私の髪の毛を浚っていく。

「あ、早乙女百合亜」

フルネームで呼ばれて、かちんと来たので思わず足を止めて振り向いた。
そこには、はにかんだ顔で笑っている、生徒会長桧垣颯太が居た。

……嘘……

私は思わず、彼の足を見る。
フツーにある。

私、今度は幽霊が見えちゃう特異体質に?!

眩暈を感じてその場に座り込んでしまう。

「大丈夫?」

差し伸べられた手を握らずに立ち上がる。

「ゴメン、あの時は本当にどうかしてたんだ。
あの、変わった探偵のお陰で助かったよ」

ジュノのことだ。

「えっと。屋上から落ちたんじゃなかったの……?」

「そうだよ」

颯太は生徒会長らしい、しっかりした顔で微笑んで見せた。

ああ、駄目。
眩暈がする。
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