恋人は魔王様
「それとも、俺じゃ役不足?」

台詞とは裏腹の否定を許さない強気な眼差しに、私は思わず首を横に振る。


「魔界に戻った途端姿が代わる、とかでなければ」

雰囲気を変えたくて、良く分からない冗談を口走る。

くすり、とキョウが笑う。

「ユリア様、お言葉ですが魔界での魔王様のお姿は同性の私から見ましても見惚れてしまうほどですよ」

「今以上?」

口にした私の声は夢見る少女のようにウットリしていて、自分でも驚いた。

ママに連れられて、しょっちゅう現実離れしたミュージカルを見ているせい、かしら?
もしくは、幼い頃劇団××で舞台に上がっていたせいかもしれない。(当然、これもママの押し付け)


意外にもこのアブノーマルな設定を受け入れて、その中に入ろうとしている自分がいた。
こういうことは、拒否するより受け入れた方が楽になるのだ。


少女趣味と妄想癖が強いママを受け入れ続けていると、こういう思考回路になるのかもしれない。


……喜ばしいかどうかは、別にして。

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