恋人は魔王様
「京極右京さんよねぇ?」

ママがきょとんとして、答える。
……これだから、天然系の人は悩みが少なくて羨ましい。

それは、多分違うと思うんだけどなー。

私はとりあえず、自分の気持ちを抑えて頷いた。

「そうね」

刑事二人が視線を合わせる。

「どちらの?」

「名前さえ分かれば、そちらで調べがつきますよね?」

できれば、そちらで調べてもらいたいっ
むしろ、その結果を私に教えてもらいたいくらいなんですけど?

若手の刑事が困り顔でぽりぽりと耳の後ろをかいた。

「君から教えてもらいたいんだけど」

「すみません。
 うちの子が何かしたとおっしゃるんですか?
 私、今から出かけないといけないの」

突然、ママは腕時計に目を落とし、語気を強めた。

「いえ、そういうわけではないんですが」

「では、お引取り下さい」

あ、今日はママ舞台に出かける日だった。
突然、ママの表情が険しくなったので刑事たちも及び腰になった。

若い方の刑事が言いづらそうに、口を開く。

「実は、君の通う高校で今日、人が一人亡くなったんだ」

「誰が?」

またまた、突拍子もないことを言われて、私は唖然とした。
ママと顔を見合わせる。

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