恋人は魔王様
えーっと、でも。
帰るとなるとあれよね?

さっきのアイツがいる前を通って帰るんだよね?

走りながらそんなことに気付いたときには全体的に全てが手遅れな感じだった。

目の前に現れたそいつは、なんていうか上から見る以上に存在感に満ち溢れていて、確かに綺麗な顔をしていて、背も高くて。

私は自分の意思と無関係に思わず足を止めてしまう。

うーん、年齢的には二十歳過ぎくらいなんだろうけど。こう、なんていうか落ち着き払っている。

「ユリア、お帰り」

……耳の奥でなく、直接耳に、そいつの声が入ってきた。

「えっと。どちらさま、でしたっけ?」

少なくとも、こんな知り合いはいないし、一度知り合ったら絶対忘れない。

「魔王様」

………エクスキューズミー?

私があっけにとられたその瞬間、そいつに腕を掴まれて抱き寄せられた。 

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