恋人は魔王様
硬直してしまった私を見て、キョウは面白そうに笑う。
それは、獲物を見つけた肉食獣が浮かべる笑みにも似ていた。

キョウの繊細な指先が、ウェーブしている私の黒髪を焦らすようにゆっくりと弄ぶ。

「キョウは怒る?」

沈黙に耐えかねて、私の方が口を開く。

「もちろん。
 殺すかも、簡単に」

「さ、殺人は駄目っ」

さらりと言われて、焦った。
……っていうかこの場合どちらを殺すのかしら?

私の想いを感じ取ったのか、キョウは耳元でさらりととんでもないことを口にした。

「もちろん、殺すのは相手だよ。
 ユリアはね………………してあげる」

あまりに過激な発言に、私は耳まで赤く染めた。
ちょっと、下手したら腰が砕けてしまいそう。

駄目っ。
このままでは、彼氏居ない暦15年にしてものすごい耳年増になっちゃうっ

私の理想の恋人はこんなにエロ系じゃなかったはずなんだけど。
……っていうか、彼氏の条件にエロ度合いなんて全然考えていなかった。


私の理想の恋人は、

年上で
かっこよくって
優しくて
包容力があって
私を引っ張ってくれる人!



確かに、最後の一文字を除けば間違いなくこの「魔王様」は私の理想の恋人だ。



でも、「人」っていう条件は、この場合「絶対譲れない」条件だよね?
そうでしょ?


誰かそうだと言ってー!!








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