恋人は魔王様
私が躊躇していると、これまた、悪意全開の素敵な笑顔を浮かべる。
「それとも、そういう大胆露出がユリアの好み?」
「違いますっ」
私は諦めて、ベッドに座る。
キョウは言葉とは裏腹に優しくファスナーを閉めてくれた。
「で、ママとメルトモってわけ?」
「昨日、メールアドレス渡されたんだ。
便利だね、これ」
キョウは新品の黒い携帯電話を手の上で弄んでいる。
(指をぱちりとならすと、今までなかったものが出てくる仕組みみたい。ここって!)
むしろ、どうしてうちの母親は娘の恋人とメール交換をしたがる!!
っていうか、どうしてここは圏外じゃないの!!
いろんなものに手当たり次第突っ込みたくて仕方がない。
「なんだか頭痛くなっちゃった」
私は正直に言った。
「大丈夫?
やっぱりまだ身体が慣れてないんだね」
心からかどうかわからないけれど、私の脳みそを軽く麻痺させるくらいの優しい声が耳元で響いた。
だから私はうっかり「やっぱり」って言葉を聞き逃すところだったわ。
危ない危ない。
「やっぱりって、何?
それ、どういう意味?」
悪戯が見つかった子供のようにキョウは肩を竦める。
「人間界よりこっちのほうが空気の密度が濃いんだ。
こう、締め付けられる感じ。
まぁ、あれだよ。高山病にかかると頭痛がするのに似てるね」
似てませんっ!!
とはいえ、私はこの機に乗じてみることにした。
「とりあえず、人間界に帰ってもいい?
もう、恋人だって分かり合えたんだから、平気でしょう?」
キョウは大げさに目をむく。
「ユリア。
それは、ヤルだけヤって、ハイサヨナラ、みたいな。
不倫相手のおじさんの台詞だよ」
……小説の読みすぎはどっちだよ!!
頭を抱える私を見て、キョウはその筋肉質な腕で抱き寄せた。
「仕方ないな。
俺はヤリ逃げされる女の子の役で我慢しよう。
今日のところは。
次は攻守交替で頼むよ」
ぼそりとそういうと、パチリと指のなる音がして、その一瞬後、私は自室のベッドの上に座っていた。
たった一人。
まるでお姫様のような、黒いドレスを身に纏い。
「それとも、そういう大胆露出がユリアの好み?」
「違いますっ」
私は諦めて、ベッドに座る。
キョウは言葉とは裏腹に優しくファスナーを閉めてくれた。
「で、ママとメルトモってわけ?」
「昨日、メールアドレス渡されたんだ。
便利だね、これ」
キョウは新品の黒い携帯電話を手の上で弄んでいる。
(指をぱちりとならすと、今までなかったものが出てくる仕組みみたい。ここって!)
むしろ、どうしてうちの母親は娘の恋人とメール交換をしたがる!!
っていうか、どうしてここは圏外じゃないの!!
いろんなものに手当たり次第突っ込みたくて仕方がない。
「なんだか頭痛くなっちゃった」
私は正直に言った。
「大丈夫?
やっぱりまだ身体が慣れてないんだね」
心からかどうかわからないけれど、私の脳みそを軽く麻痺させるくらいの優しい声が耳元で響いた。
だから私はうっかり「やっぱり」って言葉を聞き逃すところだったわ。
危ない危ない。
「やっぱりって、何?
それ、どういう意味?」
悪戯が見つかった子供のようにキョウは肩を竦める。
「人間界よりこっちのほうが空気の密度が濃いんだ。
こう、締め付けられる感じ。
まぁ、あれだよ。高山病にかかると頭痛がするのに似てるね」
似てませんっ!!
とはいえ、私はこの機に乗じてみることにした。
「とりあえず、人間界に帰ってもいい?
もう、恋人だって分かり合えたんだから、平気でしょう?」
キョウは大げさに目をむく。
「ユリア。
それは、ヤルだけヤって、ハイサヨナラ、みたいな。
不倫相手のおじさんの台詞だよ」
……小説の読みすぎはどっちだよ!!
頭を抱える私を見て、キョウはその筋肉質な腕で抱き寄せた。
「仕方ないな。
俺はヤリ逃げされる女の子の役で我慢しよう。
今日のところは。
次は攻守交替で頼むよ」
ぼそりとそういうと、パチリと指のなる音がして、その一瞬後、私は自室のベッドの上に座っていた。
たった一人。
まるでお姫様のような、黒いドレスを身に纏い。