恋人は魔王様

「あのね。
コスプレっていうのは、偽の制服を着るときに言うの。
これは、正真正銘私の制服なの。
だからコスプレとは言わないの。
わかります？」

「制服には本物と偽者があるのか。
それは、偽札みたいなものか？」

と、キョウは軽く首を傾げる。

「まぁ、だいたいそんなもの」

面倒になった私は説明を途中で諦めた。
別段、キョウがコスプレというジャパニーズ文化を理解せずとも支障はないはずだし。


とはいえ、このままだとなんとなく二人ともベッドの上を全裸で過ごすという良くない環境にあるきがして、私は思わずシーツに包（くる）まった。

キョウが、魅惑的に微笑み顔を近づけてくる。

「知ってる？ユリア。
ここでは、ことの後にシーツに包まるのは、『もう一回ヤりましょう』っていうのと同義語なんだよ」

私は思わず目を丸くした。
なんて変な決まりごとの多い妙なとこなのかしら……

「嘘っ」

反射的に声をあげる。

「嘘」

真面目な顔をしたまま、キョウが言うから私は思わず手をあげた。
もちろん、おとなしくその綺麗な顔を殴らせてくれるわけもなく。
軽々と私の手を掴むと、獲物を見つけたチーターの瞳で私を捕らえた。

「ユリア、俺は暴力反対主義なんだけど。
そっか、ユリアは痛いのが好きだったね。
次は実践してあげる」

と、魅惑的な悪魔の笑いを携えたままキスをした。

「そんなことより」

キスから解放された唇で問う。
諦めて、差し出された黒いドレスを着ることにしたのだ。
このまま裸で居たら、次に何が起きるかわかったものではない。

まぁ、服を着たところでどれほど何が防げるかも、わかったものじゃないんだけど。

気持ち気持ち、こういうのは！

「何だ？」

「私、とりあえず家に帰りたいわ。
ママも心配すると思うし」

「大丈夫。
きちんと俺からメールを打っておいたから」


パードゥン？