恋人は魔王様
スタッフー?

私は心の中で、何度もドッキリのスタッフに呼びかけてみた。
ついでにいえば、きょろきょろとテレビカメラまで探したりもしてみた。




けれども、残念ながら、どこからも誰も来てくれない。

私は、まるで台詞も知らずに舞台に迷い込んだ一般人のように、うろたえてそこに立ち尽くすほかはなかった。


は!でもでもでも。
よく考えたら、ここに立ち尽くしていたら全校生徒に見られるだけだ。


「あの、えっと」

何て呼びかければよいのかも分からない。いくらなんでも、『魔王様』なんて初対面のイケメンに呼びかけるような面白い精神は持ち合わせていない。

「どこかに行かない?」

そいつは、真紅の唇を軽く歪めた。
微笑んだ、というべきかもしれない。
なにせ、その瞳がちっとも笑わないので上手いこと表現できる表情にならないのだ。

「ユリアは積極的だな。
 そういうの、嫌いじゃない」


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