恋人は魔王様
キョウ、でなく「京極右京」でしたっけ?
その名前を探し出す。
あ、メルアド本当に入ってる。
結局、知れば知るほど、魔界と人間界の距離関係は分からなくなってしまうのだけれど、今はそうした瑣末にこだわっていられる余裕はなかった。
月曜日、私が学校をサボるか、
ママに制服をおねだりするか、
さもなければ私服で学校に行くか、
という、よく分からない瀬戸際にいるのだ。
キョウへ。ママのケータイ借りました。私、そっちに制服忘れているよね?どうやって取りに行ったらいいか分からないの。忙しいと思うけど、私の部屋にでも届けておいてください。明日までに、お願いね。それがないと、すごく困るの。百合亜
慣れないケータイなので、言葉は簡潔に。
絵文字なんて一切なしで。
自分でも、女子高生らしさがないメールだとは分かっているけれど、時間もないことだし、とりあえず送信。
改行の仕方も、スペースの空け方も、何もかも分からないんだもの。
送った後で考える。
アイツ、魔王だよねー。
読みづらい文章なんて、ちゃんと読んでくれるのかしら。
っていうか、日本語読めるのかしら。
いやいや、ママにメールを送ったくらいだから、大丈夫に違いない。
私は自分を無理やり納得させ、ケータイを置くと二階に上がって準備を整えた。