恋人は魔王様
「こんにちは」

「どうも」

黒いTシャツのスカルプ柄までもが、なんだか恐縮しているように見える。

「で、笑麗奈、本日の予定は?」

西条が聞く。

「とりあえず、レストラン予約してあるの。
ほら、私のお気に入りの」

「ああ、Kビルの最上階ね」

さらりと、ここら辺では一番高級なレストランの名前を出す。
一瞬表情を硬くする桧垣に

「ランチだから大したことないわよ、大丈夫」

というと、西条と腕を組んで歩き始めた。

この二人、本当に映画に出てくる恋人同士のように絵になるんだなー。
周りの人たちが振り向いていることに、気づいているのか。

……まぁ、気づいた上で、振舞っているに違いないとは思うけど。

私と桧垣は、このままここに立ち尽くすわけにも行かず、二人の後ろについていく。
なんともぎこちないスタートとなった。


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