黒い怪物くん
近くの公園に駆け込んで、俺は息を切らしながら涙を拭った。
こんな気持ち……どっか行ってしまえばいいのに。
4年も小鳥に惚れていて、良いことなんて一つもなかった。
周りに気を遣わせて…小鳥の事襲いかけて…傷付けて……。
俺はただ…
その場にしゃがみ込んだ。
「……矢嶋?」
その声にバッと顔を上げた。
声の主は…暗くて顔をしっかり確認する事は出来ないが…烏山ということは認識できた。
「……烏山……こんな所で何してんだよ?」
暗いから気付かれる事はないと思うが、俺は泣いているのを悟られない様に烏山のいない方を向いて鼻を押さえた。
「ちょっと散歩……かな」
「……そうか。なぁ…今日、部室で小鳥との事たまたま見た…小鳥と付き合うのか?」
「え…。気持ちは伝えようと思ってるよ…」
「……悪い。俺には関係ない事だったよな。はぁ……本当俺に出来ない事なんでも簡単にやっちまうな…」
「そんな事……ないよ」
烏山の声には、全く張りがなく…何となく弱々しい声の出し方をしていた。
「烏山…?具合でも悪いのか?」
表情までは読み取れないけど…少しふらついていた。
「いや…大丈夫」
そう言って、近くのベンチに座り込んだ。
「……俺は矢嶋が羨ましいよ」
「は!?どう考えても今小鳥と付き合う寸前なのは烏山だろ!何言ってんだよ!」
烏山は静かに笑った。