黒い怪物くん
放課後は電車に乗って試写会の劇場へ行く。
二人で電車に乗るのなんか初めてだ。
いつも治樹がいたりしてたからな…
少し混んでいて、高い位置にしか吊革がない場所に来てしまった。
俺は余裕で届くけど小鳥はフラフラしている。
「あぁ。チビだから届かねぇのか」
「届くよ!ほら、背伸びすれば届くんです」
「やっと指が届くくらいじゃねぇか…」
電車が揺れたらすぐにバランスを崩しそうだ。
「…俺に掴まってれば?」
「へ、平気…ふわッ」
本当に電車が揺れて小鳥はバランスを崩した。
俺は小鳥の腰に腕を回して支えてやった。
「だから掴まってれば良かっただろ?」
「うう…じゃあ掴まる…」
小鳥は俺の腕にキュッと掴まってくれる。
あぁ……このまま連れて帰りてぇ……。