黒い怪物くん



目的地に到着して試写会チケットを見せて劇場に入った。



入ってすぐに突然係員に声を掛けられる。



「カップルでご来場の方先行でカップルシートにご案内しております。カップルシートあと一つ空いてますのでこちらどうぞ」

「カ、カップル!?」



俺達カップルだと思われてんのか!?



「わぁ…鷹哉ぁ!見て!ソファだよー」



小鳥は大喜びでカップルシートに座ってしまった。



カップル…じゃなくてもいいのか…?



「鷹哉も早く座ろ?」

「ああ…」



小鳥の隣に座ると結構幅が狭くて小鳥との距離が近かった。



そして周りを見るとカップルシートでイチャイチャしているカップルだらけ…


俺は小鳥に小声で言う。



「おい…俺達場違いじゃね?」

「へ!?何で?」

「ここカップル限定だろ…周りカップルだらけだぞ」

「あ、そっかぁ…映画館にソファあるの初めてだったからつい座っちゃった…やっぱり駄目かな…?」

「……小鳥が俺とカップルと思われてもいいなら……俺はカップルのふりしてもいいよ」

「私も……鷹哉がいいなら……カップルのふりしてても大丈夫…」



片想いしてる俺にとってこれだけ報われたと思った日はなかった。




本当にカップルになるとは言っていないけど、ふりだけで俺は舞い上がっていた。
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