黒い怪物くん
校舎裏へ向かっていると正面から治樹と鈴木が並んで歩いて来るのが見えて、頭にきた俺は真っ直ぐ治樹に向かって行って胸ぐらを掴んだ。
「治樹くんっ!矢嶋君何してるの!?やめてよ!」
「うるせぇ!俺は治樹に話があんだよ!」
「鷹哉…どうしたの?落ち着いてよ……鈴木さん、俺鷹哉と話すから先教室戻っててもらって良い?」
「……うん」
鈴木は走って教室に戻っていった。
「鷹哉…とりあえず離して?」
「嫌だ!お前ふざけんなよ!」
俺は治樹に拳を振り上げた。
治樹の顔を向かって振り下ろすとパッと避けられて俺の拳は空振りした。
「避けんな!」
「だって殴られる意味わかんないし…俺が本当に悪いなら避けないから何で怒ってんのか教えてよ」
「…お前何でも出来て…女子からもモテて……彼女は…小鳥だけじゃ足りないのかよ!?鈴木なんかより小鳥の方が何百倍も可愛いじゃねぇか……なんで満足出来ないんだよ!?モテるからって二股かけて良いと思ってんのかよ!?」
「……鷹哉……えーっと…あのさ?」
「お兄ちゃんッ!鷹哉が何故かお兄ちゃんの事すごく怒ってるって…」
小鳥がそう叫びながら俺達の所へ走って来た。
お兄ちゃん……?
俺は小鳥の言葉に、治樹を掴む手を緩めた。
「…もしかして知らなかった?」
「……」
そういえば…二人の名字同じ……。何で今まで気づかなかったんだ?
「鷹哉…小鳥の為に怒ってたんだ」
「ふえ?私?」
……ものすごい恥ずかしい!
「違っ…ちげぇよ!こんなちんちくりんでチビの事どうとも思ってねぇし!」
「何それ!?チビって!鷹哉とあんまり変わんないじゃん!」
「うっせぇ!俺より低いだろ!俺より低かったらチビなんだよ!」
あれ…小鳥を罵ると、緊張しない…
小鳥と緊張しないで、話せる方法を見つけた。
「鷹哉…怒りの方はもう大丈夫?」
「べ、別に最初っから何にも怒ってねぇよ!治樹!彼女出来て良かったな!って祝いにきたんだ!」
「…ありがとう」
「そうだったのー?なんだぁ…良かったー」
ああぁ…治樹にすげぇ悪いことをしてしまった…けど、小鳥がいると何も言えねぇ…。