黒い怪物くん
それから半年が過ぎた。
中学三年の夏。
昼休みに俺達三人は学校の保健室にいた。
「お兄ちゃん172センチ!」
「だいぶ伸びたかな。170センチ越えてたんだ」
男子中学生の成長はだいぶ早いようで、最近また背が伸びたような気がして俺と治樹は春の身体測定ぶりに身長を測っていた。
春に測った時は俺も170センチはなくて治樹より1センチ低かった。
治樹が測り終わって次に俺が測る。
「鷹哉は…あー!174センチだ!」
「マジで!?治樹の身長超した!うわー…治樹に初めて勝った!」
「鷹哉やったな」
何故か治樹まで喜んでくれた。
ここにきて…今まで一度も勝った事のなかった治樹に初めての勝利。
こんな些細な事なのに、ものすごい嬉しかった。
「それで……小鳥も測れよ!」
「測んなくていいもん!」
「鷹哉様が特別に測ってやるから来い!」
暴れる小鳥を捕まえると思ったよりもずっと小鳥が小さくて…華奢で驚いた。
こんなに小さかったか…?
小鳥の身長を測ってやると…160センチ?こんなにあったか?
足元を見ると思い切り背伸びをしていた。
「小鳥~?往生際悪いぞ!」
小鳥の肩を下に押して背伸び崩してやる。
「うぅー!」
「…155!お前入学してから1センチしか伸びてねぇじゃん!」
「馬鹿ぁ!一年生の時はほとんど変わらなかったくせに!これからもっと伸びるもん!」
「小鳥、伸びなくても大丈夫だよ。そのくらいの小鳥が可愛いって鷹哉も思ってるから」
「思ってねぇよ!」
俺達はもう前の俺達に戻る事が出来ていた。
もちろん悲しみが消えるなんて事はないけれど二人とも一歩一歩前に進めているようだ。