黒い怪物くん




その忠告の意味がわかったのはそれから数分後の事だった。


烏山の家の前に差し掛かると、家から烏山が出て来た。


すると…


烏山の姿を見た小鳥の表情がパッと明るくなるのを俺は見逃さなかった。



小鳥は嬉しそうに烏山の元へ走っていく。


「大ちゃん!おはよー!」

「あ……小鳥。おはよう…髪可愛く出来てるな…」

「えへへ!早く起きてお兄ちゃんにやってもらったの」


は……?何だ?呼び方まで変わっている。
昨日来たばかりの転入生と小鳥が仲良くなっている。

二人が仲良くなっている事に苛立った。


「…………焼き鳥、本気にしてんじゃねぇよ!社交辞令に決まってんだろ?ほんっと…お前ガキだな?」



ガキなのは俺だという事はわかっている……わかっているけど…。



俺は小鳥の髪を掴む。



烏山の為にセットされた髪型に苛立った…



「あ……鷹哉!やめて!」



すると、烏山に腕を掴まれる。



「なんだよ?」

「……やめろよ…昨日やり過ぎたと思ったんだろ?」



昨日はいつもの悪ノリで、小鳥の髪をグシャグシャにして小鳥を泣かせてしまった。



まさかあんな事で泣くとは思っていなかったわけで…さすがに、泣かすような事はもうするつもりなんかなかった。



この完璧な髪型をグシャグシャにしてしまったらどうなるかなんて、考えればわかることだ。



しかし今の俺にはそんな事考える余裕なんてなかった。


「い、意味わかんねぇ…俺達はいつもの事なんだよ!何で仲良くなってんのか知らねぇけど、昨日初めて俺達と会った奴にはわかんねぇかもしれないけど」


グシャグシャ!


「鷹哉ぁッ…あ……ふえぇッ」


烏山の為の髪型なんて見たくなかった…

髪をグシャグシャにすると案の定小鳥は泣いてしまった。


「…小鳥?…学校着いたら治樹にやり直してもらおう?」

「ヒックッ……いい」


烏山が小鳥と治樹の事を名前で呼んでいることにまた腹が立っていた。


「………またミルクプリン買ってやるから機嫌直せよ」



皮肉たっぷりにそう言うと、小鳥は俺を睨んだ。


「……鷹哉なんて大ッ嫌い!もう一生話掛けないでッ!」


小鳥は泣きながら一人で走っていった。




今回の“大嫌い”がいつもの“嫌い”とは違う事はすぐにわかる。



嫉妬に狂った俺は、治樹の忠告を聞けなかった…

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