黒い怪物くん
感情が溢れるままに、教室で小鳥を抱き締めてしまった俺は……恥ずかしさで、小鳥の事を見ることが出来ないまま昼休みを迎えた。
昼飯を買う時に購買で一番最初にミルクプリンを手に取る。
「2日連続ミルクプリンが食べられるなんて小鳥喜びそうだね」
治樹はふっと笑いながらそう言った。
「……4年も一緒にいてこのくらいしか喜ばせる方法わかんねぇから…はぁ……だから嫌われてんだよな…」
「いや、嫌ってはないと思うよ?」
「あんだけハッキリ本人に嫌いって言われてんのに、説得力ねぇよ」
いつも通り治樹と昼飯を食べてミルクプリンを持って教室に戻った。
小鳥のところに行くと俺の持ってるミルクプリンを見た小鳥は、わかりやすいくらいに喜んでいた。
「ミルクプリン!今日もくれるの!?」
あんだけ嫌な思いさせたのに、このくらいで許すなよ…しかも、怒りながらいらないとか言ってたくせに…。
「あ?誰がやるなんて言った?俺が食べる為に買ったんだよ!」
「むぅ……じゃあ向こうで食べればいいでしょー!見せつけないでよ」
「…さっき自分でプリンいらないって言ってただろ」
「そ、そうだけど…」
すると、いつも笑っている彩美は無表情のまま立ち上がった。
「それじゃあ……そうだ。タカヤン、彩美はタカヤンがもう少し頭良いと思ってたよ!評価。頑張りましょう!じゃあね」
彩美も俺の気持ち知ってるんだよな…。
俺の気持ち知ってる奴から見たらやっぱり俺がしていることは馬鹿でしかないんだ。
俺はミルクプリンを開けて一口食べた。
小鳥がミルクプリンに注目している…クソ…可愛すぎる…
「………どんだけミルクプリン好きなんだよ」
俺はスプーンにミルクプリンを掬って小鳥の口元に持って行った。
「……食べていいのー?」
「早く食べろよ」
「わぁ!いただきます!……美味しい!」
笑った…しかし、小鳥を笑顔にさせたのはミルクプリンであって俺ではない。
「フッ…餌付けみたいだな」
「鷹哉ぁ…あと一口ちょうだい」
とりあえず今はミルクプリンに頼ろう。
今度は俺が小鳥の事を笑顔にさせられるようにしよう。