黒い怪物くん
「こちらも聞き流していただいて結構ですが、もしかしたら化け烏かもしれません」
「化け烏?化け猫とか化け狐とか…そういう?」
「大悟が可愛がっていたカラスが最近また庭に来るようになったんです。そのカラスが私にはどうしても普通のカラスに見えなかった…もしあのカラスが化け烏であるなら大悟の姿になるのではないかと…そんな風に信じてもいいかなと思っているんです…すいません。こんな想像話に付き合ってもらってしまって」
「いえ…俺も…その話……信じたいです…」
「私も……だって…大ちゃんは私達のクラスにいたんだから…」
すると、バタバタと先程の大ちゃんの弟が走ってきた。
「お父さん!庭に……あ、邪魔してゴメンナサイ」
「どうした?」
「庭の木に白いカラスがいる!しかも、かーちゃんとそっくりなんだよ!」
私達は顔を見合わせて全員で庭に出た。
すると………
松の木の上に真っ白なカラスがとまっていた。
「本当だ……白いカラスだ……あのカラス…かーちゃん…何で白くなったんだろう…」
「……綺麗」
「小鳥…こんなに近くでカラス見て大丈夫か?」
「あ…全然大丈夫…」
“小鳥…10年前…泣かせてごめんな”
「え!?鷹哉、今何か言った?」
「カラス見て大丈夫か?って言ったけど」
「その後!」
「いや?」
「…そっか」
バサッバサッ
カラスは優雅に羽根を広げて飛んでいってしまった。
「あー!行っちゃった!また来るかな?」
「いや…結構弱ってたみたいだ…どこか誰もいない静かなところでも探しに行ったのかもしれないな」
私はカラスの姿が見えなくなるまで見送った。