ヒーローの進化論


一瞬強い風が吹いて、地面を染めていたイチョウが舞い上がる。
冷たい空気が頬を撫でてその時初めて、自分が涙を流していることに気付いた。

いつかこんな日が来るかもしれないと、ずっと怯えていた。
想い合っているはずの2人が向き合う時なんて、一生来なければいいのにと。
性格の悪い私はそう願っていた。


大きなガラス窓に背を向けて、あの2人から逃げるように歩き出す。
秋風が目に染みて痛くて、私は泣きながら駅を目指した。



根拠はないけど、私はあの男を振り向かせる自信があった。
何度もその名を呼んで、こっちは良い印象持ってるよオッケーだよって、言動で精一杯主張して。

今までみたいにゲーム感覚。
手強い相手だけど、場数を踏んできた女戦士の私には勝てる試合だ。

それなのに。

何考えてるか分からないし、名前も覚えてくれないし、私に興味ないし。
顔だけいいはずの、ちょっと優しくしてくれただけのそんな男だったのに。

胸が張り裂けそうに痛い。
私には向けてくれない笑顔を、喉から手が出るほど欲しいあの笑顔を、あの子にあげるなんてズルい。


こんなはずじゃなかった。
本気で好きになるつもりなんて全くなかった。
気付かなければ良かったのに、こんな気持ち。

そうすればこんな辛い思いもせずに済んだのに。


なんで私が、1人で帰らなきゃならないの。
それも泣きながら。


ほんと、こんなはずじゃなかったのに。

全然、上手くいかないじゃん。








to be continued.





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