ヒーローの進化論
「ご、ごめ」
必死に隠す。
テーブルに広げていたプリントを掴んで顔を覆ったけれど、それがさっき山井くんの貸してくれたルーズリーフだったので猛烈に自分を呪った。
だけど今更別のものに交換することも出来ず、ましてや泣き顔を晒す訳にもいかず。
名前を呼ばれた。
たった、たったそれだけのことなのに。
どうして涙が出るんだろう。
「ほんと、ごめんっ」
見ないで、と小さく吐き出した声は掠れていた。
こんなみっともない姿、見られたくなかった。
私が彼のことをどう思っているか、勘付かれたかもしれない。
いやきっと、勘付いた。
「初めて、」
「っ、」
「初めて西野の名前知った時」
ルーズリーフを持つ手が震えている。
山井くんがどんな表情で、どんな瞳で私を見ているのか分からない。
見たくない。同情に満ちた目なんて、見たくない。
更に涙が溢れ出てきて、ここから消えていなくなりたいと思った。
いっそ、私を消してくれ神様。
みっともないし、情けない。
何をやってるんだろう、私は。
「笑って名前知った時、…ぴったりだと思って」
「、」
「すごい楽しそうに笑う子だと思ってたから、知って驚いた。この子の為にあるような名前だなぁって」