ヒーローの進化論


「ご、ごめ」


必死に隠す。
テーブルに広げていたプリントを掴んで顔を覆ったけれど、それがさっき山井くんの貸してくれたルーズリーフだったので猛烈に自分を呪った。

だけど今更別のものに交換することも出来ず、ましてや泣き顔を晒す訳にもいかず。

名前を呼ばれた。
たった、たったそれだけのことなのに。

どうして涙が出るんだろう。


「ほんと、ごめんっ」


見ないで、と小さく吐き出した声は掠れていた。

こんなみっともない姿、見られたくなかった。
私が彼のことをどう思っているか、勘付かれたかもしれない。
いやきっと、勘付いた。


「初めて、」

「っ、」

「初めて西野の名前知った時」


ルーズリーフを持つ手が震えている。
山井くんがどんな表情で、どんな瞳で私を見ているのか分からない。

見たくない。同情に満ちた目なんて、見たくない。

更に涙が溢れ出てきて、ここから消えていなくなりたいと思った。
いっそ、私を消してくれ神様。
みっともないし、情けない。
何をやってるんだろう、私は。


「笑って名前知った時、…ぴったりだと思って」

「、」

「すごい楽しそうに笑う子だと思ってたから、知って驚いた。この子の為にあるような名前だなぁって」

< 6 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop