[BL] ずっと君の側に
後日、時間を会わせて、待ち合わせをした。


俺は、少し早めについたが、待ち合わせ場所には、千歳がもう待っていた。



「千歳」


「おぅ、政晴。
なんか、私服って新鮮だな。
政晴は、ジャケット系好きなのか?
凄く似合ってるぞ」


「そうかな。
千歳は、それでばれたりしないの」


「ハットに眼鏡してれば、以外とばれたりしなもんだ」



何でも、着こなす、千歳って格好いい。



「それより、いくぞ、ほら」



手を差し出された。


意味が分からず、じっと見つめていると



「恋人同士な訳だから、これくらい普通だろ」


「流石に、白昼堂々、手を繋ぐのは」


「ほら、もう行くぞ」



手首を掴まれて、歩き出した。


ただ、それだけなのに、
心臓の音がいつもより遥かにうるさかった。




それから、二人で映画を鑑賞した。


殺人鬼とそれを追いかける刑事の
鬼気迫る儚く切ない物語だった。


殺人鬼役を演じた千歳の演技もそうだけど、物語も引き込まれる内容だった。

印象だったシーンは、

『笑え、笑え。
いかなるときもそうすれば、どんなことだって楽しくなる。
殺人さえも、愉快で滑稽だ』

と言う台詞に異様な存在感を感じた。



そして、終盤になるにつれて、
追い詰められて、捕まる所では、


『僕は、泣きながら空を見上げた。

涙で視界は歪んでいたけど、
とても綺麗な空が広がっていた。

どれだけ汚いものばかりに
目がいっていたのだろう。

こんなに美しい世界なのに俺は、
何処を見ていたのだろう。』


捕まりそうになり、自分の心臓をナイフで一刺しそうになるところで、
追いかけていた刑事が止めに入り、



『何故、死なせてくれないんだ』


『俺の仕事は、犯人を捕まえる事だからだ』


その言葉に、ナイフを離し、気を失う。



それから、警察病院で供述をとることになった殺人鬼は語り出した。


何故、人を殺すのかと問いかけられると――。



『苦しみが欲しい』 



そう答えた。
それに続いて――。



『僕を死刑にしてください。
あの人たちのように苦しみを僕に下さい。

人は皆、平等なら、僕の事殺してくれるでしょ。

何のために、汚れた血を何度も見てきたと思ってるの?

僕がその苦しみを味わえないのは、不公平だ」



と言う、真に迫る演技に驚愕していた。


千歳は、純粋に本当に凄い。
色々な表情や感情を巧みにあやっているんだ。


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