桜舞い散るとき、キミは涙する
「人間見た目じゃわかんないよ~?
それにナンパじゃなくて、本気で実紅に一目惚れして、声掛けてきたのかもしれないじゃん」
「ひ、一目惚れ!?」
これまた突拍子もない佳奈の発言に、おもわず声が裏返る。
「しかもイケメンだったんでしょ?もったいないな~、もう!」
「確かにカッコよくて王子様みたいだったけど……。って、バ、バカなこと言ってないで!
ほら、もう帰らないとバイトに遅れちゃうっ」
「え~?本当にいいの? 今ならまだ間に合うかもよ?」
「いいからいいから!早く行くよ」
「ぶ~。つまんないの~」
不満たらたらで頬を膨らませている佳奈の背中を無理矢理押して、駅へと向かう。
佳奈には「もういいから」と言ってはいるけれど。
『まだ間に合うかも』という佳奈の言葉に、心がグラグラと揺れているのが自分でもわかる。
私もなぜだか、本当は気になって仕方がないのだ。