桜舞い散るとき、キミは涙する
私のお母さんがお父さんと出会ったのは、二人が19歳の時。
喫茶店で働いていたお母さんに、大学生だったお父さんが一目惚れしたらしい。
お父さんの猛アタックが実を結び、付き合い始めて半年後、お母さんのお腹の中に私が出来たんだって。
だけどまだ学生だったお父さんは、周囲から結婚を猛反対されたらしくて。
それでも大学を卒業したら結婚しようと約束していたのに……。
私が生まれるちょっと前に、川で溺れていた子供を助けようとして、お父さんは20歳という若さでこの世を去った。
だから私は、生まれてから一度もお父さんに抱かれたことがない。
もちろん、会ったことさえも……。
けれどお母さんが話してくれるお父さんは、いつも優しくて正義感が強くて、とってもとっても誠実で。
たとえ会ったことはなくても、私はお父さんのことが大好きだし、すごく誇りに思っている。