桜舞い散るとき、キミは涙する

確かあれは、私が小学校低学年くらいだったっけ。


死んだ人はお墓に入れられて、家族は年に何度かそのお墓に行くんだということを、友達から聞かされたことがあった。



それまでお父さんのお墓に一度も行ったことがなかった私は、早速その晩、軽い気持ちでお母さんに聞いてみたんだ。


突然私から聞かれて、最初はビックリした顔をしていたお母さんだけど


「お父さんのお墓はね、とってもとーっても遠いところにあって、行くことができないの。
だからこのタンスの上にある写真がお父さんのお墓だと思って、実紅がいっぱい話かけてあげてね」


そう悲しそうに笑いながら、私をギュッと抱きしめてくれたんだ。



『あぁ、きっと自分にはわからない何か難しい理由があって、お父さんのお墓には行けないんだな』

そう子供心に感じたことを覚えている。



そしてそれ以来、なんとなくこれ以上深いことを聞いてはいけない気がして、お父さんの実家はもちろんのこと、お墓についても、一度も口にしていない。


私ももう高校生だから、本当は色々知りたいけれど……。

いまだに話してくれないということは、やはりそれなりの大人の事情というものがあるのだろう。


だから、いつかお母さんのほうから話してくれるまで、焦らず待とうと心に決めていた。
< 15 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop