桜舞い散るとき、キミは涙する

「これでよしっと!」


手洗いうがいと一緒に、お父さんのマグカップの水を新しく取りかえる。


朝晩のマグカップの水交換。

それと、出かける時は『いってきます』。

帰宅したら『ただいま』の挨拶をお父さんにすることが、私が幼い頃から欠かさず行っている日課だ。



「さぁ、夕飯にしましょ」


四角いテーブルの上には、出来立てホヤホヤのカレーライス。

それに花を添えるように並んだ、彩り鮮やかなグリーンサラダ。


それを見て腹ペコだったお腹が、返事をするようにグ~と音を立てる。


「あらあら、実紅ってば」

「だって、すっごくお腹減ってたんだもん」


お母さんと顔を見合わせ、クスクスと笑いながら「いただきます」と両手を合わせる。


「美味しい!」

「ふふっ、よかった」

「やっぱりお母さんのカレーが一番美味しいね!」


私も時々カレーを作るけれど、やはりお母さんの味には全然敵わない。


ものすごい勢いでカレーを頬張る私を見て、お母さんが嬉しそうに目を細め微笑む。



「今日から2学期だけど、久しぶりの学校はどうだった?」

「うん、今日はね~……。……っ!」


お母さんから今日のことを聞かれた途端、昼間出会った彼のことが真っ先に頭に浮かんだ。
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