桜舞い散るとき、キミは涙する
ハァハァと肩で大きく息をし
「ミオ……」
私を真っ直ぐに見つめ、もう一度彼がかすれた声で呟く。
この暑い中を走ってきたのだろうか。
滝のような汗が額から顎へと伝い流れ落ち、シャツの胸元に大きなシミを作っていた。
誰だろう?この人……。
スッと通った鼻筋に、短髪より少し長めの爽やかな黒髪。
品のいいノンフレームのメガネが良く似合っている、端正な顔立ちをした青年だった。
少なくとも、私の知り合いにこんな王子様みたいなカッコイイ男の子は存在しない。
それに……
「あの……、人違い……だと思うんですが……」
私の名前は、真咲 実紅(まさき みく)。
そう。
彼が言う『ミオ』ではなく『ミク』なのだ。