桜舞い散るとき、キミは涙する

「あ……」


私に気が付いた男の子が、小さく声を漏らす。


そうして完全に固まって棒立ちになっている私のほうに、ゆっくりと近付いてきた。



「え?やだ、なんかこっち来るけど……!もしかして、実紅の知り合い?」


コソコソと耳打ちしてくる佳奈。



知り合いとゆーか、なんとゆーか……。


「昨日街で会った……、人違いされた男の人」

「えぇ!?あのナンパ男!?」

「佳奈ってば声大きい!」

「むぐむぐぐ……っ」


慌てて佳奈の口もとを抑え、厄介な口を黙らせる。



高校生だったんだ。てっきり大学生かと思った……。

ってその前に、なんでこんな所にいるの!?

まさか、ホントにうちの学校に彼女がいるとか?

でもでも、こっちに向かって来るし……っ。



混乱状態の頭の中を、無数の疑問符がグルグルと飛び回る。



そうこうしているうちに、彼が私の前で立ち止まり


「あの……」と、声を掛けてきた。
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