桜舞い散るとき、キミは涙する
* * * * * *
嘘みたい……。
まさか昨日会った男の子が、また目の前にいるなんて……。
正方形のテーブルを挟み、相向かいに座っている私と彼。
ここは学校から歩いて5分程のファーストフード店。
佳奈に促されるまま、二人でやって来た。
アイスコーヒーを口に運びながら、彼が窓辺に視線を向ける。
窓から射し込む淡い光が降り注ぎ、より一層彼の爽やかさを際立たせていた。
コーヒーをブラックで飲むなんて、やっぱり大人っぽいな。
アイスティーにガムシロップを入れながら、なんとなく、お子様な自分と比較してしまう。
ちなみにこのアイスティーも、彼が買ってくれたもの。
自分の注文と一緒に「何飲む?」とサラリと聞いてきて、慣れた様子で私の分まで支払ってくれたのである。
そのあと、もちろん自分の分は払うと言ったんだけど。
「俺が手間取らせたんだから」と、これまたスマートにかわされてしまった。
なんてゆーか、動作の一つ一つがホント絵になるんだよね。
緊張でカラカラに乾いた喉を、冷たいアイスティーで潤しながら、改めて彼の顔を見つめる。
昨日も思ったけど、やっぱりカッコイイなぁ。
品の良い紺色のズボンと淡い水色のワイシャツがよく似合っており、知的な感じがより一層アップしている。
ノンフレームのメガネから覗く漆黒の瞳には、昨日のような絶望の色は、もう浮かんではいなかった。