桜舞い散るとき、キミは涙する

「それで、昨日の件だけど」


不意にこちらを向いて口を開いた彼に、ドキリと鼓動が跳ね上がる。


「本当にすみませんでした」

「へっ?」


頭を下げて突然の謝罪。

予想外のことに、おもわず間の抜けた声が口から零れ出てしまった。


「い、いえ!全然大丈夫ですから」


慌てて両手を左右にブンブン振る。

そんな私の手を見て、なぜか彼が申し訳なさそうに顔を曇らせた。


「やっぱり……。少し跡が残ってる」

「跡……?」


よく見ると、昨日つかまれた部分にうっすらと、手の跡があざとなって残っていた。


全然気付かなかった。


多少内出血のようになってはいるけれど、痛みもなんともない。


「半袖だから見える部分だし。女子にケガさせるなんて、本当にすみません」


そう言って、またしても深く頭を下げる彼。


どうやら今日は、昨日の件を謝るためにわざわざ来てくれたようだ。


あまりの律儀さに、なんだかこちらの方が申し訳なくなってくる。
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