桜舞い散るとき、キミは涙する
「こんなところで珍しいな」
「清水」
『清水』と呼ばれた黒縁メガネをかけた男の子が、笑顔で歩み寄り親しげに彼の肩に手を置く。
秀明館の制服を着ているところをみると、どうやら同じ学校に通う友達のようだ。
秀明館の人って、みんなメガネかけてるのかな?
『頭が良い人=メガネをかけている』
これは私が昔から抱いている、勝手な偏見。
そんなことを何気なく考えながら、二人のやりとりを見守ること数十秒。
私の存在に気が付いた清水君が、ふとこちらを振り返った。
「ミオ……ちゃん……」
なぜか一瞬にして凍りつく清水君。
レンズの奥にある瞳が驚きに大きく見開かれ、左手に持っていた鞄がドスンと派手な音を立てて床に落ちる。
え?また『ミオ』?
昨日人違いされた時の名前も、確か『ミオ』だった。
私を凝視したまま、呆然と立ち尽くす清水君。
この反応も、昨日の彼と全く一緒だ。