桜舞い散るとき、キミは涙する

「あの、それとこれ」

「?」



続いて紙の横に差し出されたのは、白い小さなビニール袋。


なんだろ、これ?


目を凝らしてみても、袋が不透明なため中身はわからない。


「湿布薬。もし痛みがあるようだったら使って下さい」

「湿布薬……」


わざわざ買ってきてくれたの?


保志君の優しさに胸がジンとなって、袋をジッと見つめる私。


「あっ、大丈夫。看護師さんに頼んで、無臭のやつにしてもらったから」

「え?」


感動して見ていただけなのに、なにやら勘違いされてしまったようだ。


でも、看護師さんに頼んだって……どーゆーこと?



言葉の意味がわからなくて聞こうとした瞬間


「それじゃ俺、このあと用事があるからそろそろ行かないと」


腕時計に視線を落とした保志君が、スッと立ち上がった。
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