桜舞い散るとき、キミは涙する
「もし痛みが治まらないようなら、さっき渡した番号かアドレスに連絡ください」
「あ、待って!」
急いでいるふうの保志君を慌てて引きとめる。
そして、手近にあった紙ナプキンに素早く自分の連絡先を記すと、そのまま保志君の胸に押し付けた。
「これ、私の連絡先!ね、念のために……その……っ」
いったい何が念のためなのか、自分でもさっぱりわからない。
普段の私なら、絶対ありえない行動。
自分でも本当に信じられないけれど、気が付くと、頭で考えるよりも先に体が勝手に動いていた。
「え……」
驚いたように、一瞬ためらう保志君。
突然のことに、戸惑っているのだろう。
ちょっと強引だったかな……。ってゆーか、やっぱおかしいよね!?
よくよく考えてみると「私はあなたに気があります」とアピールしているようなものだ。
恥ずかし過ぎて顔が上げられない。
本当に顔から火が出そうだ。
自分の行動を心底後悔しかけた、その時
「うん、わかった」
「っ!」
何も聞かずに保志君は、私の手から紙ナプキンを受け取ってくれたのだった。