桜舞い散るとき、キミは涙する

好き──



実際に言葉にした途端、胸がキュンと苦しくなる。

こんな感情、私は知らない。


私も一応女の子だから、過去にいいなぁと思う男の子がいなかったわけじゃないけど……。


こんなふうに苦しくなったりドキドキしたり。

そんな経験一度もなかった。



「とにかく、全然そんなんじゃないんだから」

「もう、実来ってば素直じゃないなぁ」


相変わらず納得できない様子の佳奈に


「明日は朝からバイトだから、そろそろ寝ないと。それじゃあまた学校でね」


そう言って半ば強制的に電話を切る。


そのまま折り畳み式の携帯電話をパタンと閉じると、敷いてあった布団に勢いよく倒れ込んだ。



私が、保志君のことを好き……?



お店で保志君から貰った紙を手に取り、じっと見つめる。



キレイな字……。


保志君の顔に負けないくらい美しい文字を、右手の人差し指で上からなぞってみる。

また胸の奥が、キュンと切ない音を立てた。
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