桜舞い散るとき、キミは涙する

なんだろう?

用事は昼間済んだはずだし。

マジメな保志君のことだから、もしかして『湿布の効果はどうですか?』とか『メールアドレスがあってるか確認のメールです』とかかな。

でもでも、普通そんなことでわざわざメールしてくる?

でもでもでも、そこがやっぱり律儀な保志君ならではの行動かもしれないし……。



完全に頭がオーバーヒートし、自問自答が止まらない。

おまけに変な妄想も。


これではまるで、佳奈と同じである。


うだうだ考えずに、さっさとメールの内容を確認すればいいだけなのに。

そんな簡単なことが、今の私にとってはものすごく難しい。



と、とりあえず落ち着いて。

深呼吸深呼吸っと。


スーッと鼻から大きく息を吸い込み、ハーッと口から一気に吐き出す。


「ゲホッ、ゲホゴホッ」


勢い余って、かえってむせてしまった。


こ、こんなことしてる場合じゃなかった。

早く返信しないと。



ようやく冷静さを取り戻してきた頭が、早くメールを開けと催促してくる。


プルプルと震える指先をなんとかメールの開閉ボタンの上に持っていき、更にそこから停止すること十秒。


「えいっ!」


ようやくのことでボタンをプッシュする。



恐る恐る薄目でメールの内容を確認すると


『明日の午後、会えませんか?』


全く予想していなかった文字が、視界に飛び込んで来た。
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