桜舞い散るとき、キミは涙する

雲一つない真っ青な空の下、駅から歩くこと7分。



「着いたよ」

「ここって……」


目の前にそびえ立つのは、まだ新しい立派な三階建ての建物。


その建物の中央部分に


『保志クリニック』


これまた大きくて立派な文字が並んでいた。



「病院?」


想像もしていなかった場所に、ぽかんと口を開けたまま棒立ちになる私。


まさか、ここって……


「俺の父親がやってる整形外科」


あぁ、やっぱり。


すっかり忘れてたけど、保志君は秀明館に通うお金持ちだったんだ。



改めて自分と保志君の環境の違いを痛感し、一気に心が重くなる。


けれど、もちろんそんな私の気持ちなど、保志君は知るよしもなくて


「実は湿布薬のことが父にバレて。相手の女の子を連れて来いって、どうしても引かなくて」


事のいきさつを丁寧に説明してくれる。


「こうなることがわかってたから、看護師さんに口止めしたんだけど」

「……」
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