桜舞い散るとき、キミは涙する
「ミオちゃん……」
「っ!?」
また『ミオ』……。
保志君、清水君に続き、これで三度目の『ミオ』違い。
そして例にもれず、最上級の驚き顔。
「父さん!!」
固まっている先生に、間髪入れず保志君が口を挟む。
『父さん』ってことは、やっぱり保志君のお父さんなんだ。
よく見ると、確かにどことなく保志君と顔立ちが似ている。
「あ……あぁ、いや、すまない。気にしないでくれ」
気にしないでって言われても……。
こうも会う人会う人に毎回同じ反応をされると、イヤでも気になってしまう。
けれどそんな私の気持ちは、いつも置いてけぼりで……。
やはり今回も何事も無かったかのように、先生が言葉を続けた。
「先日は息子がご迷惑をかけてしまったようで、申し訳ありませんでした」
突然イスから立ち上がり、深く頭を下げる先生。
「い、いえっ」
予想外のことに、おもわず恐縮してしまう。
お医者さんて、どっちかってゆーと恐いイメージが強かったけど……。
保志君のお父さんは違うんだ。
柔らかな物腰に、ふんわり優しい笑顔。
緊張でガチガチだった肩から、スッと余計な力が抜けていく。