桜舞い散るとき、キミは涙する

「ミオちゃん……」

「っ!?」



また『ミオ』……。



保志君、清水君に続き、これで三度目の『ミオ』違い。


そして例にもれず、最上級の驚き顔。


「父さん!!」


固まっている先生に、間髪入れず保志君が口を挟む。


『父さん』ってことは、やっぱり保志君のお父さんなんだ。



よく見ると、確かにどことなく保志君と顔立ちが似ている。


「あ……あぁ、いや、すまない。気にしないでくれ」


気にしないでって言われても……。


こうも会う人会う人に毎回同じ反応をされると、イヤでも気になってしまう。


けれどそんな私の気持ちは、いつも置いてけぼりで……。


やはり今回も何事も無かったかのように、先生が言葉を続けた。



「先日は息子がご迷惑をかけてしまったようで、申し訳ありませんでした」


突然イスから立ち上がり、深く頭を下げる先生。


「い、いえっ」


予想外のことに、おもわず恐縮してしまう。



お医者さんて、どっちかってゆーと恐いイメージが強かったけど……。

保志君のお父さんは違うんだ。


柔らかな物腰に、ふんわり優しい笑顔。


緊張でガチガチだった肩から、スッと余計な力が抜けていく。
< 43 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop