桜舞い散るとき、キミは涙する
「じゃあ、ちょっと腕をみせてね」
「はい」
指示に従い腕を出そうとした、その時
「っと。その前に……大和!
年頃の娘さんがこれから診察だっていうのに、お前はいったいいつまでそこで見ているつもりだ?」
厳しい口調で、先生が保志君をたしなめた。
「すみません」
しまったというように、一礼して診察室から出て行く保志君。
「すまないね。あいつはどうも気が利かなくて」
「そ、そんなことないです!保……大和君には、とてもよくしていただいて」
私の腕の具合を確認しながら、先生が言葉を続ける。
「真咲さんは、息子と付き合いは長いのかい?」
「いえ。つい先日、偶然知り合ったばかりで」
「そうか……。つい最近か……」
なにやら考え込むように、突然先生が押し黙る。
眉間には、深いしわまで刻まれていた。