桜舞い散るとき、キミは涙する
あれ?私の腕、そんなに重症なの?
「先生……。その……私のケガ、そんなに酷いんですか?」
恐る恐る尋ねる私の言葉に
「いやいや、そんなことはないよ。念のため、レントゲンだけ撮っておこうか」
再びニコリと微笑む先生。
けれど私には、なぜだか先生が無理して笑っているように思えてならなかった。
その後、レントゲンの検査でも特に異常は見当たらず、あざも数日で消えるとの診断を受けた。
あざ、もうすぐ消えちゃうのか……。
刻印のように刻まれた、保志君の指の跡。
それが消えてしまうと、私と保志君を繋ぐ物も一緒になくなってしまうようで……。
一抹の寂しさが、胸に広がる。
「ありがとうございました」
「こちらこそ、暑い中来てもらって申し訳なかったね。
もしも痛むようなら、息子のほうに連絡くれれば、またいつでも診るから」
「はい、わかりました」
ぺこりとお辞儀をして、診察室のドアノブに手をかける。
「真咲さん!」
「?」
先程までとは違う、どこか切羽詰まったような先生の声が、出て行こうとする私を呼び止めた。