桜舞い散るとき、キミは涙する
悶々とした思いを抱えたまま診察室を出ると、待合室のソファーに座り、文庫本を読んでいる保志君がいた。
「お待たせしました」
「いえ、俺の責任だから」
『責任』……か……。
それ以上私には何も聞かず
「それじゃ、駅まで送ります」
保志君が外へと歩き出す。
私のケガの状態、聞かないんだ。
お医者さんの息子だから、聞かなくてもだいたいわかるのかな。
それとも……、やっぱり聞く価値がないほど、私には興味がないってこと?
保志君の背中を見つめながら、来た道と同じ道を再び歩き続ける。
特に会話を交わすこともないまま、気付けば、駅の改札に辿り着いていた。