桜舞い散るとき、キミは涙する
「実紅~!何やってんの?早く行くよ~!」
「あ……」
すっかり止まっていた私の中の時間が、遠くから聞こえてきた親友の声で再び流れ出す。
「ミ……ク……?」
不意に彼の口から零れ落ちた私の名に、ドキンと鼓動が跳ね上がる。
それと呼応するかのように、私の腕をつかんでいる彼の手に一段と強い力が加わった。
「っつ!」
あまりの力強さに、おもわず痛みをこらえる声が漏れてしまった。
「っ! すみません」
私の声にハッと我に返ったのか、慌てて私から離れる彼。
普通ならばホッとする場面だけれど……。
私から彼の手が離れてしまったことが、なぜだかものすごく寂しくて。
初対面の人にこんなこと思うなんて、私ってばどうしちゃったの?
自分でも理解できない感情に戸惑っていると
「実紅ってば~!!」
再び私を呼ぶ親友の声が、混雑している街中に響き渡った。