桜舞い散るとき、キミは涙する
「こんにちは。この間はありがとうございました。
こんにちは。この間はありがとうございました。
こんにちは。この間はありがとうございました。」
「いえ、たいしたことしてないし」
「そんなことないよ。すごく嬉しかったもん。……って。ひゃぁっ!?」
耳に入ってきたのは、聞き覚えのある心地よい声。
そして目の前には、制服姿の保志君。
時刻表の横にある時計を見ると、時刻はすでに3時50分を回っていた。
どうやら挨拶の予行練習に集中しすぎて、電車が着いたことに気付かなかったようだ。
さっき保志君、『たいしたことしてないし』って言ってたよね……。
ってことは、私の言葉に対する返答なわけで……。
全身からサッと血の気が引く。
心の中で練習してたつもりなのに、いつの間にか声に出てた~っ!?
そのうえ私『嬉しかった』なんて言っちゃったよね!?
絶対絶対聞かれちゃったよね!?
今度は一気に体中が沸騰する。
あまりにも恥ずかし過ぎて、顔が上げられない。
ひたすら俯き続ける私。
そんな私の視界の片隅に、突然青い紙袋が映し出された。