桜舞い散るとき、キミは涙する

* * * * * *

その日の夜。


自室の机の上に、保志君から貰った参考書を並べてみた。


その中の一冊を手にとり、パラパラとページをめくる。

すると私の目の中に、見覚えのあるキレイな文字が次々と飛び込んで来た。


「うわぁ……すごい」


参考書のいたるところに書き込まれた補足文。


要所要所に黄色い蛍光マーカーで引かれたアンダーラインは、どれも皆まっすぐで美しい。

おそらく定規を使って丁寧に引いているのだろう。


本当に勉強熱心で几帳面なんだな。

大雑把(おおざっぱ)でマイペースな私とは大違い。


この参考書を見ただけで、彼の人柄が伝わってくる。

とってもマジメで誠実な人……。


「身分違い……か……」


そもそも身分違いって何だろう?


佳奈の言う通り、保志君は皇族でもなければ総理大臣の息子でもない。

確かに裕福な家庭には違いないけれど、大きなくくりでまとめれば、私と同じ『一般人』だ。


100年前なら叶わぬ恋だったかもしれないけれど、今は平成の世。

昔と比べたら、まさに自由の時代だ。
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