桜舞い散るとき、キミは涙する
その証拠に保志君はこんな私にも、分け隔てなく優しくしてくれる。
けれどそんな保志君に自分は不釣り合い。
傷付くのが怖くて、そう思い込むことで逃げていた。
近付こうと頑張りもせず、言い訳ばかりして必死に自分を守っていた。
そうやって保志君と自分の間に一線を引いていたのは、常に私のほうだったんだ。
「ホント……弱虫だな、私……」
目を閉じて、貰った参考書を胸にギュッと強く抱きしめる。
真っ暗な闇の中に、昨日初めて見せてくれた彼の綻(ほころ)んだ顔が浮かび、胸がキュンと音を立てた。
「強くなりたい」
そしてもっと保志君に近付きたい。
弱虫で情けない自分なんてもうイヤだ。
初めて好きになった人。
初めて芽生えた恋する気持ち。
ちゃんと、大切にしたい。
努力もせずに後悔なんてしたくない。
そのためにまず私が乗り越えなくちゃいけないこと。
──『ミオ』
私と保志君を繋ぐ、けれど障害にもなっている人物。
保志君は隠そうとしているけれど……。
きっとその人物のことを知らないままでは、前に進めない気がする。
たとえそれが私にとって、辛い真実であっても……。
「ダメ。逃げちゃダメだ」
私はもう一度参考書を抱きしめ、下唇をグッと噛みしめる。
そして自分の気持ちと向き合う決意を固めたのだった。