桜舞い散るとき、キミは涙する

その証拠に保志君はこんな私にも、分け隔てなく優しくしてくれる。


けれどそんな保志君に自分は不釣り合い。

傷付くのが怖くて、そう思い込むことで逃げていた。

近付こうと頑張りもせず、言い訳ばかりして必死に自分を守っていた。


そうやって保志君と自分の間に一線を引いていたのは、常に私のほうだったんだ。


「ホント……弱虫だな、私……」


目を閉じて、貰った参考書を胸にギュッと強く抱きしめる。

真っ暗な闇の中に、昨日初めて見せてくれた彼の綻(ほころ)んだ顔が浮かび、胸がキュンと音を立てた。


「強くなりたい」


そしてもっと保志君に近付きたい。

弱虫で情けない自分なんてもうイヤだ。


初めて好きになった人。

初めて芽生えた恋する気持ち。


ちゃんと、大切にしたい。

努力もせずに後悔なんてしたくない。


そのためにまず私が乗り越えなくちゃいけないこと。


──『ミオ』


私と保志君を繋ぐ、けれど障害にもなっている人物。


保志君は隠そうとしているけれど……。


きっとその人物のことを知らないままでは、前に進めない気がする。


たとえそれが私にとって、辛い真実であっても……。


「ダメ。逃げちゃダメだ」


私はもう一度参考書を抱きしめ、下唇をグッと噛みしめる。

そして自分の気持ちと向き合う決意を固めたのだった。
< 67 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop