桜舞い散るとき、キミは涙する

「ごめんごめん、お待たせ」


人混みをかき分けながらパタパタと走り寄る私に

「おっそ~い!」

親友の江藤 佳奈(えとう かな)が不満を漏らす。


佳奈とは同じ中学出身で、その時からずっと親友。

かれこれ、もう5年の付き合いになる。


サバサバした性格でショートカットがよく似合う、どちらかというとボーイッシュなタイプの女の子。

ちょっぴりミーハーなところが、たまに傷なんだけど。



「実紅ってば一緒に歩いてたのに、急にいなくなるんだもん。ビックリしちゃったよ」


唇を尖らせながら抗議してくる佳奈に

「あはは、ごめんてば」と、もう一度謝る。



今日は9月1日の木曜日。

長いようで短かった夏休みも昨日で終わりを告げ、今日からまたいつも通りの高校生活が始まった。


日常に戻ったとはいえ、初日の今日はさすがに始業式のみの午前中登校。


バイトも夕方からだったため、通っている高校から3駅先にある市街地へ、親友の佳奈と遊びにやって来た次第だ。


「それで、いったいどうしたの?」


口ではブーブー言ってはいるけれど、内心心配してくれていたらしい。


根が世話焼きな佳奈は、なんのかんの言いつつも、いつもこうやって私を気遣い助けてくれる。


そんな佳奈のことが、自慢の親友でもあり、心から大好きだった。


「えっと、それがね……」


私は先程男性から声を掛けられた一件を、かいつまんで説明した。
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