桜舞い散るとき、キミは涙する

「え~っ!? それってばナンパじゃん!?」

「は……?」


『ナンパ』?


予想外の単語の登場に、一瞬思考が停止する。



いやいやいや、まさかそんなこと。


ブンブンとかぶりを振り、再び頭を稼働させる。


あ、なんだか、イヤな予感……。


経験上、こういった話の流れになると絶対発動する佳奈の悪い癖が、チラリと頭をよぎる。


恐る恐る隣を見ると、案の定期待に目をキラキラと輝かせた佳奈が、ものすご~く熱い視線を私に送っていた。


あ~……やっぱり。完全に乙女チックモードに入ってる。



基本はあっさりしている佳奈だが、こと恋愛に関しては話は別。


常日頃から、恋愛ドラマや少女漫画のチェックは欠かさない。

そしてこの手の話になるたびに妄想を膨らませては、夢みる少女へと変貌する。


しまった、と後悔しても後の祭。

一度このモードに突入してしまうと、なかなか元には戻ってくれないのだ。
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