桜舞い散るとき、キミは涙する

けれど当然現実は、そんなテレビドラマのようにうまくはいかないわけで……。


バッカみたい、私……。

もうずっと、連絡さえ来てないのに……。


早く諦めろと言わんばかりに、先程まで快晴だった青空が、いつの間にか黒い雲で覆(おお)われている。

今にも雨が降り出しそうだ。


「テレビでは、今日雨降らないって言ってたのに。天気予報のウソつきぃ」


もちろん傘なんて持って来ているはずもなく。


なんだか神様にまで反対されているような気がしてきて、おもわず空を睨みつける。


そんな私に更に追い打ちをかけるように、顔に冷たい雨粒がポタリと落ちてきた。


「やば!降って来ちゃった」


幸(さいわ)い、ここから駅は目と鼻の先。

走ればさほど濡れることはないだろう。


そう思い慌てて踵(きびす)を返した時、歩道橋の上に見知った男性の姿が目に入った。


「保志君!?」


ドクンと胸の鼓動が跳ね上がる。


諦めなくちゃいけない恋ならば、このまま会わないほうがいいに決まってる。


そんなのわかってるけど、それでもやっぱり体は正直で……。


奇跡のような偶然がただただ嬉しくて、気が付くと私は駅ではなく、歩道橋へ向かって駆け出していた。
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