桜舞い散るとき、キミは涙する

以前何度か見た、絶望に染まった冷たい目。


その視線が、歩道橋の下の道路へと一直線に注がれていた。


声が……かけられない……。


あまりの生気の無さに、それ以上近付くことも、声を発することもできない。


雨が更に酷くなったせいか、いつの間にか歩道橋の上にいるのは、私と保志君だけになっていた。


保志君……。


彼の横顔を見つめたまま、その場に立ち尽くす。


私がそうしている間も保志君は、雨や周囲を気にすることもなく、ただひたすら道路を見続けている。

まるで道路以外、彼の瞳には映っていないかのように……。


やっぱり私が、これ以上踏み入ったらいけないの?

保志君の心の傷が、余計深くなるだけなのかな……。


どうするべきか迷っていると、突如(とつじょ)保志君がふらりと、歩道橋の端に向かって一歩踏み出した。
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