この恋が罪だとしても
「そーいうこと、だから……俺が教えてあげる。恋がどれだけ、幸せなんかをさ」
「八雲……」
そう言って、また私の頭を撫でる八雲に、私は何も言えないままその優しげな顔を見つめる。
恋の幸せなんて、忘れてしまったけれど……。
八雲といたら、感じることができるのかな。
いっそ、八雲を好きになれれは良かったのに……。
なのに、私の心の中には……泉くんがいる。
自然体になれて、辛い時に傍にいてくれる八雲より、彼女がいて、私なんか好きじゃない泉くんにしか、心動かされない。
それはきっと……。
私が、泉くんの不器用なのに優しい所とか、一途に北園さんを想ってる健気さに心惹かれてるからだ。
どうしてこんなにも、想いは違う方向へ向いてしまうんだろう。
想っても、想われても切なくなるこの胸が……。
幸せだなんて、思える日なんて来るのかな……。
そんな気持ちで、私は八雲の笑顔を見つめていた。