この恋が罪だとしても


「知らない……怖いっ」

「ゆ、雪乃……嘘だろ、頼むから嘘だって言ってくれよ……っ」


そう言って涙を流した泉くんに、心臓が張り裂けるほどの痛みを感じた。


……神様は残酷だ。

泉くんにとって大切な人の、一番大事な記憶を奪っていったから。


そう、北園さんはこの日、階段から落ちた際に頭を打ったせいで、記憶喪失になってしまった。


「雪乃!!」

「泉くん……わ、私のせいで……っ」


この私に、泣く権利なんて無い。

なのに、涙は紡げない言葉の代わりに沢山溢れてきた。



「お前は……俺の大事なモノを奪った」

「っ………私の、せいで……」


奪ったのは、神様ではなく、この私だ。

向けられる、憎悪の視線。

それは、私の心臓を抉り、まるで鎖のように絶望が体を締め付ける。


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